自由落下する物体に抵抗kvが働く運動方程式(1),(2)式を無次元化して解く。
mdt2d2x=mg−kv(1)
(1)式を無次元化しよう。また、vで表すと(2)となる。
mdtdv=mg−kv(2)
ここでは5つの手法での無次元化の方法を紹介するが、どれも結果は同じだ。少し遠回りするのも重要である。
(2)式を無次元化
1.m,v,tで無次元化g,kも無次元化
m,v,tを無次元化する。
変数 |
基準量 |
無次元量 |
m |
m |
m~=m/m=1 |
v |
V∞=mg/k |
v~=v/V∞ |
t |
τ |
t~=t/τ |
vの基準量は終端速度V∞=mg/kとするば良さそうだ。tの基準量はよくわからないのでここでとりあえずτとでもおいておこう。後で具体的なτを決めれば良い。もしvの基準量の選び方が恣意的だと思うのなら最後のやり方でvの基準量を一般にVとおいて行う。
(2)式へ代入する。
mm~dt~dv~τV∞=mm~τV∞g~−mm~τV∞k~v~dt~dv~=g~−k~v~(3)
[g]=LT−2,[k]=[MT−1]から
g~=V∞τ−1gk~=mτ−1k(4)
(4)式を(3)式へ代入する。
dt~dv~=mkτ−mkτv~
よって右辺のmkτを1になるようなτを選べばいいので
τ=km
とすれば良い。
つまり
dt~dv~=1−v~(5)
となる。
2.m,v,tで無次元化g,kはそのまま
(3)式のようにg,kの無次元化量をいちいち計算して再び代入していたわけであるが、実はそんなことをしなくても良いのである。
(1)式から
mm~dt~dv~τV∞=mm~g−kvdt~dv~=mm~V∞τ(mm~g−kV∞v~)=V∞gτ−mkτv~=mkτ−mkτv~(6)
これからもτ=m/kと求まる。
3.v,tだけで無次元化
さらに言うと、mの無次元化もここでは必要な操作ではなかったのである。無次元化に注目する変数v,tだけ無次元化すればよかったのだ。
4.vの基準量:V
最後にV∞を基準量として最初から設定しない場合から無次元化してみよう。
mdt~d2v~τV=mg−kVv~dt~dv~=Vgτ−mkτv~
よってτ=m/kとなるのでV=kmg=V∞となる。
(1)式を無次元化
5.vの基準量:V∞
(2)式は次のようにも表せることは言うまでもない。ではそのような形式でも無次元化したらどうなるだろうか?
mdt2d2x=mg−kdtdx
ここではV∞のようなわかりやすい基準量がないため、x,tの基準量をそれぞれχ,τとする。
mdt~2d2x~τ2χ=mg−kdt~dx~τχdt~2d2x~=χgτ2−mkτdt~dx~
これで右辺の量を1になるようなχ,τはそれぞれ
χ=k2gm2(=V∞τ)τ=km
となる。面白いことにχはτの間に終端速度で進む距離と等しい。これは偶然なのだろうか。
以上より無次元化した式は以下のように求まる。
dt~2d2x~=1−dt~dx~
幸いにもx(t)は解析的に求められるので求めておこう。(5)式から
x~(t~)=t~−e−t~−1
となることが確認できるだろう。